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■「分かる人にだけ分かる」のような二重構造な小説や映画があるが、ソフトウェア作りに応用できるか?

2021年 5月 5日(水) 0:00:00



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年齢を重ねてきて、最近「できるようになってきたな」と思うことは、読んでいる小説や、観ている映画、遊んでいるゲームについて、過去には読み取れなかったような深い要素を感じることができるようになったことです。

子供の頃には、ただただ楽しむだけだった作品について、大人になって読み返すと、「あ、これって、もっと深いことが書いてあったんだな」と気づくこととか。

例えば「ドラクエ4」って、昔は、ただ単にRPGなゲームとして楽しんでいるだけだったのですが、改めて考えてみると、「デスピサロが人間を憎む構造がきちんと描かれている」なとか、「AIによる戦闘システムがゲームの作り手にとって重大な挑戦だったんだな」とか(でもクリフトはラスボスにザラキを唱え続けるのはバカだなとか)、そんな感じの。

大人になってから観た作品なので、子供の感覚で観ることはできなくなってしまっていますが、「ドラえもん」「クレヨンしんちゃん」の映画などでは、子供は純粋な娯楽作品として楽しむことができ、大人は深い要素を味わえるようにできているのだそうで。

映画の考察を行っているYouTuberの方々の動画とかを観ていると、僕には全く考えも及ばないような深い考察をしている方々の考えに触れることもできて、なかなか楽しいですね。

僕は趣味でフリーソフト制作を行っているわけですが、ソフトウェア作りにおいても、こういう技術って、採用できないかな、と思ったりします。

そういった、浅い味わいと深い味わいの両方を提供できるような、フレームというか、構造というか。

………。

………。

………。

と、いろいろ考えてみると、いくつかのソフトウェアでは、そういった片鱗が見えますね。

例えば、ビギナーズモードプロフェッショナルモードみたいなモードを準備して、切り替えられるようにするとか。

年賀状印刷ソフトの「筆まめ」なんかでは、そういったモードがあったと思います。

それから、マイクロソフト社の「Excel」「Word」や、それからWindows自身も、一時期、「あまり使わない機能は隠す」という機能がありました。あれも、そういった工夫の一つですかね。

ただ、これらには大きなデメリットがあります。ソフトウェアを利用する上で「見えるもの=存在するもの」「見えないもの=存在しないもの」と考えがちなところがあることですね。最初に使い始めたときには、自分はビギナーだからとビギナーモードを選択して、複雑な機能のための選択肢を表示しないようにしたものの、ビギナーモードであることを忘れて「このソフトではやりたい機能がない。クソソフトだ!(実は見えないだけなのに)」というレッテルを貼られてしまうことになります。

あるいは、「Excel」「Word」なんかでも、使わない機能が見えなくなって、いざその機能が欲しい時に「あれ?ない?存在しないの?クソソフトだ!(実は見えないだけなのに)」といったことが起きたりします。

そういえば最近、「あまり使わない選択肢を隠す」機能なんて見かけなくなった気がします。上記のようなクレームが多発したのかもしれません。

まぁともかく、デメリットがあったんですね。ただ、有料ソフトの場合、買ってしまった以上は、頑張って使おうという気になるかもしれません。あるいは著名なソフトの場合、ググれば出てくることに気づくかもしれません。

著名ではない、例えば私の作るようなフリーソフトでそれをやってしまった場合、どうなるか。

例えばかつて「いじくるつくーる」では、その時点で利用しているOSのバージョンで使えない機能は、非表示にしていました。その結果、ある雑誌の特集で、カスタマイズソフト群の利用比較と称して、使える機能/使えない機能の○×表を作られた際、このソフトでは存在するはずの機能を存在しないことにされるなど、痛い目に遭ってしまいました。いちおうクレームを入れて、次号で訂正をしてもらいましたが、その号だけしか読んでいなかった読者にとってはそれがすべてなので、「使えないソフトだ」と判断されてしまっていたのかもしれません。

というかフリーソフトの場合、無料で利用できることから、例えば利用頻度の低い機能を隠すなどしてしまった場合、「あ、このソフトは欲しい機能が無いらしい。使うのをやめよう」と、安易に諦められてしまう可能性があります。コストの割にリスクが高い。利用者が少なければ、それについて扱ったWeb上の記事も少なくて、ググっても、その機能があることが見つからないことになりかねない。

「ググったときに見つかるか」というのも実は重要な要素で、世の中には「ググって見つからないものは、この世に存在しないことと同じだ」という考えを持っている人は結構多いらしいんですね。INASOFTで「Web版ヘルプ」と称して、各ソフトウェアのヘルプをWeb上で公開しているのは、そういった方々への対策です。

というわけで、ソフトウェア作りにおいてはデメリットが大きいことが分かったものの、同じことって、映画・小説・ゲームなどの娯楽作品では起こらないんでしょうか?

考えてみれば、起こるような気がします。

映画・小説・ゲームなどの作り手が「分かる人に分かればよい。俺が作りたい作品はこれだ!」という固い信念を持っているならともかく、最初に書いたような「深い考察」をしている方々に拾ってもらえなかった場合、というか、一般大衆は深い考察をしながら読むようなことはせず、パッを見のエモさで評価しがちだったりしますから、「ああ、これはクソ映画だ」「クソ小説だ」「クソゲーだ」という短絡的な評価を得がちということになってしまうのでしょう。でも、すごい作品ならば、そういう一般大衆に対しては「単純なエモさ」を提供し、深い考察をする人には「深い考察ができるような要素」を提供するということも、技術的には可能なのかもしれません。

最初に「クレヨンしんちゃん」の映画のことで書いたような、子供は子供で楽しめるし、大人は大人で楽しめるように作るとかですね。


先日、シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇を観てきたときのことを書いたときに、かつてのバイト先で出会った社員さんが、テレビアニメ版エヴァの最終話付近の「アレ」について、深く理解して感動していた、ということを書いたわけですが、あれも深く読み取れる大人ならば、ちゃんと読み取れるようにできていたのかもしれません。

というか、僕としては、新劇場版の4作品についても、シーンごとのエモさについては理解するものの、シナリオの連続性という意味では、あまり理解ができていなかったわけですが、世の中の多くの考察記事を読むと、いろいろと読み取っている人は多かったりしますからね。

加えて先日、NHK BSで、「さようなら全てのエヴァンゲリオン」と称して、庵野秀明監督に密着した番組が放送されていたのをみたのですが、庵野秀明監督が脚本を書くにあたって、非常に大きな苦悩を持っていた様子が描かれていました。そして、それに振り回される(やり直しをさせられる、指定した締め切りをどんどんリスケさせられる)スタッフが描かれていました。

それと、先日エヴァについて友人と会話をした際、新劇場版エヴァの結末と、貞本版(漫画版)エヴァの結末が、けっこういい感じに重なっていて、貞本さんはきちんと「読み取って」いたらしい、という話を聞きました。

僕としては、庵野秀明監督は、シーンごとのエモさは重視するけど、シナリオの連続制覇重視しないのだろうと勝手に考えていたのですが、どうやら、ちゃんと観ればちゃんとシナリオができている、と考えるのが正しいのかもしれません。

しかし、多くの人にとってはそれが無理だった。上の密着番組の庵野監督へのインタビューで語られていましたが、かつて2chには、庵野監督をいかに○すか、みたいなスレッドが立ち上がり、それを見た監督は自○を2回くらい考えた、と語っていましたので、相当なものだったのでしょう。でも、読み取れるだけの能力を持っていれば、読み取れたはずなんですね、きっと。

先日、Amazonプライムに仮加入してみたのですが、エヴァンゲリオンのテレビシリーズは4000円追加でくらい払えばレンタルすることができるようなので、ちょっと全部見直してみようかなぁ、と。

19歳のときに読み取れなかったテレビ版エヴァに、41歳で再チャレンジしてみます。



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