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■「シン・ウルトラマン」を観てきた話。シン・ゴジラと比べると少し物足りないが、同人作品だと思えば

2022年 5月24日(火) 0:00:00



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先日、公開から一週間程度遅れましたが樋口真嗣 監督/庵野秀明 企画・脚本・総監修の映画「シン・ウルトラマン」を観てきました。

まだ公開から一週間しか経っていないため、総合評価はまだ分かりませんが、こちらの情報によると、公開3日間の観客動員数が64万人、興行収入は9.9億円を突破しているそうなので、まずは大成功といったところだそうです。他のウルトラマン作品は、6億円とか8億円とかいう数字だそうなので。

ただ、上記の記事を書いている人も述べていますが、これは平成以降のウルトラマンシリーズというよりは、庵野秀明氏の「シン・○○」シリーズの一角という捉え方が妥当だという気もするので、「シン・ゴジラ」や「シン・エヴァンゲリオン」と比較してどうだったかで、総合評価は判断したいと思っています。そういう意味で、結果が出るのは、まだまだこれからかと思います。

この作品を見て最初に思った感想を、とりあえず列挙します。なるべくネタバレは避けますが、後半の方に少しネタバレが出てきます。

  • 斎藤工(神永新二役:ハヤタ隊員相当)は、得体のしれない宇宙人(外星人)の役をやらせたらすごい。監督の指導の賜物かもしれないが、一切瞬きしない怪しすぎる演技がすごい。そういえば、映画「団地」での得体のしれない演技の評価も個人的には高いし、得体のしれない宇宙人(外星人)の役をやらせたらすごい人なんだろうなと思う。
  • 有岡大貴(滝明久役:多分イデ隊員相当)は、ヒルナンデスのイメージと全然違うなぁ。やっぱり役者なんだよなぁ。
  • 庵野秀明は、どうして今回、監督や総監督ではなく、企画・脚本・総監修というポジションを選んだのか?映画を観るまでは分からなかったが、映画を観て、エンディングクレジットを見てみると、企画・脚本・監修だけではなく、編集やら宣伝製作やら、果てはモーションアクターまで、あちこちに名前が挙げられており、要は「手を動かしてほぼ全部自分でやりたかった」ということなのかと思う。要するには、同人(二次創作)映像作品の「帰ってきたウルトラマン」を、名声と財産と確固たるポジションを得た後に作ったらこんなことができる/やり直せるという、超高度な同人(二次創作)映像作品だったわけだ。監督になってしまったら、マクロな視点でしかできなくなってしまうから、あえてミクロな視点で映画に取り組みたいという強い欲望の結果がこれなんだろう。

    --- 以下、若干のネタバレを含みます ---

  • 映画ナタリーの記事によれば、庵野氏は、当初『企画・脚本』として参加予定だったが、製作委員会からの強い要請で様々な細かい担当をすることになったのだという。シン・ゴジラでの信頼があったのだと思う。この信頼と強い要請を受けて、庵野氏がより一層、「自分の好き勝手」できる土壌が作られたのであれば、これほど楽しいことは無いだろうなぁ。それにしても、モーションアクターはどの役をやったのだろう?ニセウルトラマンかな。きっと、今回もNHKが取材をしているだろうから、後に「シン・ウルトラマンを作った○年」みたいなNHKスペシャルを放送してほしい。BSプレミアムでディレクターズカット版を放送してほしい。その場合は、樋口監督の特撮マニアっぷりも観られるといいと思う。現時点では、樋口監督よりは「庵野氏の作品」みたいな評価になってしまっている。樋口監督も相当な思い入れを持って作っていて、相当なこだわりを入れているはず。そこら辺を可視化し、評価されてほしい。
  • 一通り観終わった感じたこととしては、だいたい「シン・ゴジラ」と被るのだが、「シン・ゴジラ」よりは少し物足りない感じがする。最初は、「庵野秀明が監督ではなかったため」ということに理由を求めようとしたが、多分なんとなく、違うような気もする。基本的に、本作品は初代ウルトラマン/ウルトラQへのオマージュと同人魂でできている。オマージュと初期特撮映画へのリスペクトと思い入れを優先し、一部の爽快感を切り捨てているのかもしれない。「シン・ゴジラ」は終盤が爽快感あふれるシーンの連続だったが、本作ではその点が少し欠けていると感じている。そういえば、ウルトラマンではなくウルトラセブンの方について、様々な社会問題に通じる話があって、大人向けの作品だという評価があった。例えば、金城哲夫のシナリオは難しく大人向けなことがあったが、後々味わい深いという評価を得ることになった。それに通ずることかもしれない。例えば、少し暗い、大人向けの要素。難しさ。ただただ正義を貫けばよいだけではないこと。日本政府の下部組織としての禍特対(科特隊に相当)が政治や大人の判断や大人の取引・落としどころみたいなことにしょっちゅう翻弄されること。
  • シン・ゴジラでは、政治やら大人の判断やらに翻弄されるのは序盤だけであったが、シン・ウルトラマンでは、けっこう後半においても政治やら大人の判断やらに翻弄されているし、最後は「ウルトラマンの判断と光の国のルールとの戦い」という難しい問題に直面している。これが爽快感を奪っているのかもしれない。ただしそれは、脚本担当の庵野氏の強いこだわりでもあるのかもしれない。爽快感よりも優先したかったのかもしれない。
  • 「シン・ゴジラ」でもそういう傾向があったが、全ての描写に何かしらの意味や意図があると思う。例えば、冒頭「シン・ゴジラ」というタイトルが出てから「シン・ウルトラマン」に変わるのは、初代ウルトラマンの初回放送時のやり方をオマージュしているのだそうだ(「ウルトラQ」というタイトルが出てから「ウルトラマン」のタイトルが出てきた)。ただ、「全ての描写に何かしらの意味や意図がある」という観点に立った場合、大きく意味不明に感じた箇所が2か所あった。

     
    • 「シン・ウルトラマン」を観に行く前、なるべく事前情報を入れないように努めていたのだが、一つだけ入ってしまっていた情報があった。「たびたびセクハラが登場するが、気にしないこと」というものであった。映画を観るまでは意味が分からなかったし、映画を観た後も該当する箇所がどこだか分からなかった。ただ、映画を観終わった後、他の人たちの感想を漁っていく中で「あれはノイズ」という表現をしていた人がいたので、ようやく理解できた。
      長澤まさみ演じる、浅見弘子(ほぼ主人公)が気合を入れる際、たびたび、自分のお尻をガッチリ掴んでバン!という音を鳴らす。その際、お尻がドアップに映される。それが「たびたびセクハラ」であって「ノイズ」なわけだ。
      自分にとっては、あれはノイズだったので、観るたびに自動的に脳内から除去していたので、映画を観終わった後の印象にはほとんど残らなかった
      何故ノイズだったかというと、あのシーンを入れる意味が分からなかったし、過去のウルトラQ/ウルトラマンの何かをオマージュやらリスペクトやらをしているようにも見えなかったので。
      であれば、あのシーンは何の意味で入れたのか?最初に書いた通り、全ての描写に何かしらの意味や意図があると思うので。
    • 物語終盤でゾフィーが登場した際、「ゾーフィ」と呼んでいた。でも、最後では「ゾフィー」と呼んでいた。途中と最後で、あえて呼び方を変えた意味が分からなかった。  


  • 最後はやっぱりゼットンとの戦いになる。初代ウルトラマンに登場するゼットンは、1兆度の光球で攻撃をしてきたそうだが、空想科学読本でおなじみの柳田理科雄氏によれば、仮に光球の直径が1mだったとすると、エネルギーは180兆×1兆×1兆kW。太陽が放つエネルギーの470兆倍。地球の位置で放たれれば、太陽を含めた太陽系全体が消滅することが述べられている。シン・ウルトラマンでは、この点をきちんと踏まえた上で、ゼットンの役割・目的を再定義している。壮大な伏線回収をされているようで、とてもうれしかった。
  • こんな感じで、初代ウルトラマンに登場する重要な概念の全て(おそらく思い当たる事全て)において、役割・目的を再定義し、矛盾をなくしたいという強い欲求を感じた。例えば、なぜ日本でばかり怪獣(禍威獣)が現れるのか?ウルトラマン登場時にハヤタ隊員がしょっちゅういなくなるけど?問題など。
    他の方の感想になるが、このようにして、特撮マニアならではの観点で、すごい作り込みをしているので、特撮マニアではない一般の客層には、さぞ受けないだろうなぁ……と思いきや、そうでもないのだという。両方の客層に受けるような要素が散りばめられているのだという。作品に多面性を持たせ、例えば、子供にも大人にも、若者にも老人にも、マニアにも一般層にも、両方に受けるように作られているのだそうだ。
  • 自分はウルトラマン放送時ではなく、夏休みに毎日再放送をしていたときに観ていただけなので、ウルトラマンそのものに大きな思い入れがあるわけではない。それでも、ウルトラマンが回転技を放つときの音とか、ゼットンの音「ピポポポポポポポ♪」は聞くだけで謎の鳥肌が立った。
  • CMで聞くとそうでもないのだが、映画館で、エンディングで米津玄師の歌が流れると、とても感動する。以降、CMで聞いても感動する。


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