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■「火花」「スクラップ・アンド・ビルド」を読んでみた

2015年 8月21日(金) 0:00:00 [さくらのブログから転記]



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コンビニの棚に、大量の「文藝春秋」が並んでいたのを観て、そういえば、又吉直樹氏の「火花」の芥川賞受賞が決まって増刷するというニュースを見たっけなと思い出し、とりあえず購入することにしました。

image.jpg

970円で、芥川賞受賞作2作品全文が読めて、評価やインタビュー記事が読めるのだから、かなり得なんじゃないかと思いまして。

(ちなみに、Amazon.co.jpでは、「火花」「スクラップ・アンド・ビルド」は共に1296円)

まぁ、nanacoポイント2倍のキャンペーンもやっていましたしね。

というわけで、読んでみた感触を書き残しておこうかと思います。

(↓以下、ネタバレあり)


僕は、どちらかというとライトなノベルを読むことが多かったので、名だたる文学賞を受賞する作品や、受賞者が書く作品なんて、難解で読みづらいんじゃないかと思っていた時期がありました。

しかし、「蛇にピアス」(著:金原ひとみ)、「蹴りたい背中」(著:綿矢りさ)を読んだときに、その考えは間違えだったことに気づきました。そりゃそうですね。受賞するような、審査員に受け、万人に受けるほどの作品が、そんなに読みづらい訳はないのです。

「1Q84」(著:村上春樹)を読んだときも同じ。すごく読みやすかった。

そのあたりから考えが変わり、偉大な作品である要素の一つは、読みやすいことなんだと理解するようになりました。

で、「火花」(著:又吉直樹)を読んだときに思ったのは、書いてある内容は面白いけど、意外と読みにくい文体だな、ということ。でも、話は分かりやすい。

その違和感の正体は、選評を見て、理解しました。

又吉氏がインスパイアする過去の作品からの影響。でも、自らが書こうとしている小説に「ひたむきに向き合い続けた結果」があぶり出されたもの。

なるほど、だから、読みにくいけど、なるほど分かりやすいんだな、と。

どういう作風の作品であっても、「それと向き合い続け、最後まで書き抜き通し、終了させる」というのは、非常に難しいこと。

以前、僕自身、シューティングゲームのシナリオを書いていたことがきっかけで、コミケ向けに同人小説を1冊書いて売った経験があるのだけど、それってムチャクチャ難しいことだというのはよく知っています。

(僕なんかと、芥川賞受賞者を比較なんかはぜんぜん出来ないけど)

ライトノベルでも、途中で筆を放り投げちゃっている人を多く見かけるし。

あと、お笑い芸人なので、お笑いの要素をあちこちに仕込んでいるのが面白かったですね。

これは多分、普通の小説家ではできないことで、又吉さんだからできることなんだろうな、と。

(品川祐の小説『ドロップ』も、そんな感じだったみたいですね。僕は映画しか観ていないので、機会があったら原作小説も読んでみたい。)



純粋に小説家として、ユーモアがあって面白いのは「スクラップ・アンド・ビルド」の方ですね。

様々な社会問題を盛り込み、様々な苦悩を抱え、なかなか職に就けない青年が、祖父の介護をする話を中心に描いていますが、介護の様子や考えについて、ピントがずれたユーモア溢れる描き方がされていて、面白い。

もちろん、扱われている問題は、現在の日本が抱える深刻な問題であり、話の内容や、考えさせられる内容は深刻そのものであり、笑い事ではないのだけど、主人公の青年がシュールにボケていて、作品が面白く仕上がっている。

それと、文体はとても読みやすい。僕の考えている受賞作の備えている要素としての読みやすさは、こっち「スクラップ・アンド・ビルド」だ。



多分、世間的に話題作になっているのは「火花」なので、もし単行本を買っていたとしたら「火花」の方だけを買っていたかもしれない。

今回はたまたま、「文藝春秋」を買えたので、両方読めたのは、とてもラッキーでした。



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